

前回は『My Disney Experienceの全仕組み:権利管理システムとしてのMDEを徹底解説』と題して、My Disney Experienceの仕組みを解説しましたが、今回はMagicBand(マジックバンド)に焦点を当て解説していきます。
はじめに

MagicBand+は、腕に巻くただの「チケット」ではありません。ウォルト・ディズニー・ワールド全体をつなぐ、小さなコンピューターであり、ゲスト体験のインターフェースです。
この記事では、
- MagicBand+とは何か
- 旧MagicBandからの進化と歴史
- バンドの中身・技術・通信の仕組み
- パーク側のシステムとの連携
- 他手段(ルームキー/MagicMobile/Apple Watch)との違い
- 旅行者がつまずきやすいポイント
まで、できるだけ技術寄りに深掘りして解説します。
MagicBand+とは?

MagicBand+は、フロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド(WDW)や、カリフォルニア ディズニーランド・リゾートで使えるリストバンド型のウェアラブルデバイスです。
従来のMagicBand/MagicBand2が持っていた以下の機能に加えて、
- パーク入園
- ライトニングレーン(旧FastPass)入場のタップ
- ルームキーとしてのドア解錠
- クレジットカード紐づけによる支払い
- フォトパスの自動・手動リンク
MagicBand+ではさらに、
- カラーLEDによる光の演出
- 振動(ハプティクス)によるフィードバック
- モーション(ジェスチャー)認識
- Bluetoothによるスマホ/パーク設備との連携
- 夜のショーやパレード、スタチューとのインタラクティブ体験
といった “アクティブな” 機能 が加わっています。

内蔵電池型

内蔵電池&ICチップ取り外し可能タイプ

充電式電池&LED点灯&振動付き
MagicBandの成り立ちと進化
MyMagic+ と初代 MagicBand
2013年、ディズニーは「MyMagic+」という巨大プロジェクト を立ち上げました。目的は、ゲストの体験をオンライン計画(My Disney Experience)とリアルのパーク体験でシームレスにつなぐことです。
その中心にあったのが「MagicBand」。RFIDチップを内蔵したプラスチック製のリストバンドで、ゲストのチケット、ホテル予約、ファストパス+、支払い情報などを紐づける“鍵”として機能しました。



MagicBand2
2016年11月のD23イベントで発表され、2017年にMagicBand2が登場しました。中央の丸い「アイコン」部分(チップ入り)が取り外し可能になり、他のバンドやアクセサリーに付け替えられるようになりました。
技術的には同じくRFID方式で、
- 近距離:タッチポイントにかざして認証
- 一部:長距離通信用のバッテリーを内蔵し、ライド写真の自動リンクなどに使用
といった構成でした。




上:ウォルト・ディズニー・ワールド50周年記念バンド
下:アニマルキングダムの「パンドラ:ザ・ワールド・オブ・アバター」オープン記念バンド


中央の丸い「アイコン」部分(チップ入り)が取り外し可能なので、キーホルダーに付け替えたり、複数人同士でバンドを交換したりもできました。





2017年にデビュー以降、2020年頃までは、オフィシャルホテル宿泊者に対しては、無地のMagicBand2が無料で配布されていました。そのおかげでホテルに宿泊する度にもらえるので、WDW行く度にマジックバンドが増えました。
無料配布とは凄すぎるサービスですね!!!



MagicBand2は、内側と外側の2重構造になっていて、お子さまや女性などバンドが長すぎる場合は、外側を切り取って内側だけで巻くことができる構造です。

MagicBand+の登場
「もっと双方向的で ”今ここでしか体験できない” 演出をしたい」という流れから、2021〜2022年にかけてMagicBand+が発表・導入されました。WDWでは2022年に本格デビューし、ディズニーランド・リゾートでも2022年10月26日に導入されています。
MagicBand+では、従来のRFIDに加え、
- Bluetooth Low Energy(※BLE)
- カラーLED
- ハプティクス(振動)
- モーションセンサー(ジェスチャー認識)
が搭載され、パーク内のセンサーやショー設備と連動することで、ショー中に光ったり、手首がトントンと振動したりするようになりました。
※BLEとは、Bluetooth規格の一部で、低消費電力と低コストに特化した近距離無線通信技術








上:カリフォルニア ディズニーランド70周年記念バンド
下:ディズニー・ワールド50周年記念バンド




MagicBand+のバンド長さ調整は、片側が短く切り落とす構造です。

MagicBand+で「できること」
基本機能(旧MagicBandと同等)
MagicBand+は、従来のMagicBandとしての機能もそのまま持っています。
- 入園ゲートでタップして入園
- ライトニングレーンの読み取り機にタップして利用
- ディズニーホテルの部屋の鍵
- 登録したクレジットカードでの支払い(PIN入力あり)
- フォトパスカメラマンにタップして写真をリンク
これは、バンド内部のRFID/NFCチップと、パーク側のタッチポイント(ミッキーのマークが光るリーダー)で実現されています。
MagicBand+ならではの体験
MagicBand+独自の体験として、代表的なものは以下の通りです。
- 夜のショー・花火との連動
- Fab 50 キャラクタースタチューとのインタラクション
- Star Wars: Batuu Bounty Hunters(バトゥー・バウンティハンターズ)
- 最新パレードやショーとの連携
これらの高度な体験は、後述する「Bluetooth+パーク内センサー+ショー制御システム」の組み合わせで実現しています。
バンドの中身:MagicBand+の技術構成
公表されている情報や技術解析記事などから、MagicBand+の概略構成は次のように整理できます。
通信方式
MagicBand+は複数の通信方式を併用しています。
- RFID / NFC(近距離通信)
- いわゆる「ミッキーシェイプにタッチ」の部分。
- ゲートや読み取り機にバンドの中心を近づけて認証する仕組みです。
- チケットや部屋番号などの“識別子”が読まれ、サーバー側のゲストデータと紐づきます。
- Bluetooth Low Energy(BLE)
- バンドとスマートフォン(My Disney Experienceアプリ)、およびパーク内のセンサー/ショー制御システムとの通信に利用。
- ナイトショーやパレードでの同期、位置に応じたインタラクションに活用されます。
- 長距離RF通信(旧MagicBand系)
- 旧MagicBandでは、ライド写真の自動リンクや、キューラインの演出のために長距離用のアクティブRFIDが利用されていました。MagicBand+ではBluetooth連携に振り替えつつ、同様の「自動リンク」体験を提供します。

MagicBandは通信機器なので、FCC IDが割り振られています。
※FCC ID(Federal Communications Commission Identification)とは、米国で販売される無線通信機能を持つ電子機器(Wi-Fi、Bluetooth機器など)に割り当てられる固有の識別番号で、電波法に関する技術基準(電磁波の干渉や放射線量など)に適合していることを証明します。


センサー・アクチュエーター
MagicBand+には、以下のようなコンポーネントが組み込まれています。
- カラーLED(マルチカラー)
- バイブレーションモーター(ハプティクス)
- モーションセンサー(加速度・ジャイロ)
- タッチ/タップ検出(バンドをダブルタップしてアニメーションを起動、など)
- 充電式バッテリー(USBケーブル付属)
LEDとハプティクスはショーの制御システムから送られてくる信号に基づき、特定のタイミングで色を変えたり振動させたりします。モーションセンサーは「手を振る」「特定の方向にバンドを向ける」などのジェスチャーを検知し、ゲーム(バウンティ・ハンターなど)で利用されます。





バッテリーと充電
- MagicBand+は充電式です。専用のUSB充電ドック/ケーブルが付属します。
- 公式の案内では、1回のフル充電で1〜3日程度の利用が想定されており、パークに行く前夜にフル充電しておくことが推奨されています。
- なお、バッテリーが切れても、RFID機能(入園や支払いなど)がどこまで利用可能かは状況や個体によりますが、「ライトショーやゲームなどのPlus機能」は確実に使えなくなります。
パーク側の仕組みとデータフロー
MagicBand+は、単体で完結するガジェットではなく、パーク側の巨大なシステムと連携して初めて真価を発揮します。
タッチポイント(リーダー)
パークの各所には、ミッキー形の光るリーダー(タッチポイント)が設置されています。
- 入園ゲート
- ライトニングレーン入口
- ホテルの客室ドア
- ショップのレジ
- フォトパスカメラマンの端末
ゲストが「Mickey to Mickey(ミッキー同士を合わせる)」と、RFIDでゲストIDが読み取られ、バックエンドのシステムが、
- チケットの有効性
- 予約済みのライトニングレーン枠
- ルームキー権限
- 支払い設定
などをリアルタイムで判定し、結果(OK/NG)をゲートやレジ側に返します。


My Disney Experience とバックエンド
My Disney Experience(MDE)アプリ/Webは、ゲストのあらゆるデータの中枢です。
- パークチケット、ホテル予約
- レストラン予約、ライトニングレーン予約
- フォトパス写真履歴
- プロフィールや支払い方法
MagicBand+が読み取られると、そのIDとMDE上のアカウントが紐づいているため、どの予約を使うか、どのカードで課金するかなどが自動的に決定されます。


My Disney Experience(MDE)の仕組みに関しては下記のブログを読むとより詳しく知れます!
ショー制御システムとの連携
ナイトショーや新しいナイトパレードでは、フロートやショー制御システムから無線で信号が送信され、周囲のMagicBand+や連携グッズ(バブルワンドなど)に対して、光や振動のパターンを同期させています。
- フロートの位置情報(GPS+タイムコード)
- 曲の進行状況
- ゲストの位置(パレードルート沿い)
などをもとに、MagicBand+側のLEDパターンがリアルタイム制御されるイメージです。
プライバシーとセキュリティの考え方
MagicBand+は「個人情報そのもの」をバンドの中に書き込むというより、「システム上のゲストIDへのキー」を持っているイメージです。
一般的なRFID/決済システムと同様に、
- バンド側にはトークン(識別子)が入り、
- 本当の顧客情報やクレジットカード番号は、バックエンドの安全な環境に保存される
という設計が採用されています。
また、BLEによる位置情報も「おおよその位置」「体験ログ」という形で扱われ、個人特定よりも、体験のパーソナライズやオペレーション改善に使われるとされています。
とはいえ、ゲスト側で
- 支払い用PINの設定
- プロフィール情報の共有範囲
- 通知・連携設定
などを適切に管理することは重要です。
他の手段との比較:MagicBand+ vs MagicBand2 vs MagicMobile
MagicBand2との違い
主な違いは以下の通りです。
- 共通:
- 入園/ライトニングレーン/支払い/ルームキー/フォトパス連携
- MagicBand2:
- 電池交換不可(長距離機能の寿命は数年)
- 光・振動・ジェスチャーなし
- MagicBand+:
- LED・ハプティクス・モーションセンサー搭載
- Bluetooth接続+アプリ連携
- 充電式バッテリー、USBケーブル付属
- パークのショーやゲームへのインタラクティブ参加が可能
MagicMobile(スマホ/Apple Watch)との違い
2021年以降、iPhone/Apple WatchやAndroid端末を使った「Disney MagicMobile パス」も提供されています。
- スマホ/Apple Watchの利点:
- デバイスを持っていれば追加のバンド購入が不要
- ウォレットアプリからパーク入園が可能
- MagicBand+の利点:
- 手首に付けっぱなしでOK(子どもや荷物が多い時に便利)
- ショー連動の光・振動、インタラクティブゲームなどはバンドが中心
- プールや雨でもそのまま使える防水性
「とにかく身軽に動きたい」「ショー連動やゲームまで遊び尽くしたい」場合はMagicBand+、
「費用を抑えたい・端末だけで十分」という場合はMagicMobile中心、という住み分けになります。
旅行者がつまずきやすいポイントと対策
最後に初めてMagicBand+を使う旅行者がよくハマるポイントを整理します。
8-1. バッテリー問題
- ショー連動やゲームはバッテリーが命です。
- 特に連日パークインする場合、毎晩ホテルで充電する前提で計画した方が無難です。
対策:
- モバイルバッテリーと一緒にMagicBand+用ケーブルも持ち歩く
- ショーの時間帯にバッテリーが切れないよう、日中はなるべくLED/振動の設定を控えめにする

8-2. 「Plus機能が使えない」誤解
- バッテリーが切れている
- アプリとのペアリングがうまくいっていない
- 最新ファームウェアにアップデートしていない
といった理由で「光らない」「ゲームが始まらない」ケースがあります。
対策:
- 到着前にアプリとバンドのペアリング、アップデートを済ませておく
- 現地到着後、ホテルの部屋で一度テストしておく



8-3. 旧MagicBandを持っている人の混乱
- 旧MagicBand2も、入園や支払いにはまだ使える場合があります。
- ただし、Plusならではのショー連動やゲームを期待するなら、旧バンドでは機能しません。
「とりあえず入園と支払いだけなら旧バンドで十分」なのか、
「せっかくなら50周年以降の新しい演出も全部楽しみたい」のかで、買い替えの価値は大きく変わります。
8-4. 家族・グループでの運用
- 小さな子どもは、バンドをすぐ外したり、無くしたりしがちです。
- 家族全員がMagicBand+にするか、一部はMagicMobileだけにするか(またはルームキー)など、事前にルールを決めておくと安心です。
まとめ:MagicBand+は「体験をつなぐインターフェース」
MagicBand+は、
- チケット・鍵・財布・フォトリンクをまとめる「IDデバイス」であり
- ショーやゲームと同期する「インタラクティブ・コントローラー」であり
- My Disney Experienceと現地体験をつなぐ「インターフェース」
という3つの顔を持ったウェアラブルです。
技術的には、RFID/NFC・BLE・各種センサー・ショー制御システム・巨大なバックエンド基盤が組み合わさった、かなり野心的なプラットフォームでもあります。
「パークの技術的な裏側まで含めて楽しみたいタイプ」のゲストにとって、MagicBand+はまさに腕に巻く“パークOS”と言ってもいい存在です。
ヒロ@mickeynet
※料金やサービス内容は予告なく変更される場合があります。
この記事は2025年12月時点の内容です。

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